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デジタルマップ活用の業界別事例

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東日本旅客鉄道

地図データサービスを活用したデジタルツインプラットフォーム ー社内利用だけでなく、社会課題の解決に向けたツールを目指して

エリア内に1,681駅を有し、7,401.2営業キロにわたる69線区で毎日1万1千本以上の列車を運行する日本最大の鉄道事業者である東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」)は、JRグループの中でも早くから鉄道事業以外で多角的な事業展開を行ってきました。技術と情報を中心にネットワークの力を高め、すべての人の心豊かな生活を実現するというグループ理念の一環として同社が開発したJEMAPS(JR East Mashup Probe System)は経済紙や業界紙だけでなく、テクノロジーを始めとする多くの分野で大きな話題となりました。

取材:下田 良征様(JR東日本イノベーション戦略本部デジタルビジネスユニット、チーフ)、神谷 柾志様(JR東日本イノベーション戦略本部デジタルビジネスユニット)

導入の目的

JEMAPSは多様なデータを地図上にリアルタイムでわかりやすく表示するデジタルツインプラットフォームです。JR東日本の列車運行データと気象情報や防災情報を組み合わせることによって、輸送障害や災害発生時における鉄道の安全と安定輸送、そして旅客と従業員の安全確保を支援するためのツールとして社内の多くの部署で利用されています。

「当社は運行状況を情報として長く一般に提供していました。一方で、鉄道運行や気象防災に関する膨大な情報を一元的に、そして迅速に把握するための手段が模索されてきました。JEMAPSの開発プロジェクトはPoC(概念実証)の作成からスタートしたのですが、スピード感を持った開発が求められていました。私たちの要件を満たすためには、PoC作成の初期段階から地図を手軽に活用して、列車の位置を描画し、気象データなどのオーバーレイを行うことのできるプラットフォームが必要でした」下田 良征 氏(JR東日本イノベーション戦略本部デジタルビジネスユニット、チーフ)

データを可視化して提供するソリューションの基盤となる地図プラットフォームの採用は、JR東日本全体のDXを推進するイノベーション戦略本部のチームにとって新しい挑戦でしたが、列車の運行情報を可視化してリアルタイムに表示するメリットは非常に大きいものであることは万人が容易に理解するところでした。

「今回のプロジェクトでは、私たちの部署が中心となって、社内の防災関連のデータを扱う部署と連携し、社外ベンダーにも参加していただいて開発を進めました」神谷 柾志 氏(JR東日本イノベーション戦略本部デジタルビジネスユニット)

導入の経緯

JEMAPSの開発プロジェクトは2020年9月に開始されました。世界が新型コロナウィルスの感染拡大による影響を受ける中、開発チームは、乗客の安全を守る鉄道事業者としての観点から鉄道の混雑状況と人の流れの相関性の重要性を改めて認識しました。

「コロナ禍という特殊な状況の中、列車の運行状況や社内の混雑情報など、当社だから取得できる情報を社内に留めておくのではなく、さまざまな方々に色々な分野で利用していただいて経済発展や社会活動に貢献するツールを作るというビジョンが生まれました」下田 氏

そのようなビジョンの下、シンプルさと高い拡張性を兼ね備えたMapboxの地図プラットフォームは、イノベーション戦略本部が求めていたスピード感のある開発作業に加えて、当初の予想を大きく超えた可能性を提供しました。

「地図プラットフォームを扱ったことのない私たちにとって、高いレベルの機能を無償で試すことができるMapboxは自然な選択でしたが、使い込むにつれて新しい可能性が次々に見つかりました。膨大な運行データと気象・災害データを可視化してリアルタイムで地図上に表示する際に最大の課題となったのがデータの形式です。しかし、Mapboxのプラットフォームでは形式さえ整えれば、KMLファイルを始めとする多様な形式のデータを容易に組み込んで拡張することができました。開発に参加した社外ベンダーからは、高度なデザインに加えて機能面でも多くの提案を頻繁にいただき、単に情報を可視化するだけのレベルを超えたエンターテイメント性の高い多くの機能を実装することができました」神谷 氏

ソリューション

JEMAPSの運用は、PoCから約20か月後の2022年6月に開始されました。JR東日本の社員であれば、この世界最大級の鉄道ビッグデータと気象・災害データを包括的に提供するデジタルツインプラットフォームに会社から貸与されているPCからアクセスできます。

現時点で利用されているMapboxの機能は地図サービス(白地図と衛星写真)だけですが、JEMAPSで検索やナビ、そして広告などを始めとするMapboxの機能を活用する余地は大きく残されています。

JEMAPSでは、列車の運行状況(位置情報と車内の混雑データ)と駅の人流データを把握できます。位置情報は列車の運行管理装置からデータを取得しています。駅車内の混雑データは、車両に組み込まれた重量測定装置のデータを基に乗車人数を推定して、列車の現在地を示す棒状のアイコンの高さで人数の多さを示しています。アイコンの位置と高さはデータの変化に応じて変化します。駅の人流データは自動改札を通過した人の数が反映されます。駅の状態を含めた運行状況の全体像を非常に直観的に、そしてリアルタイムで把握できるようになりました」神谷 氏

視覚的な運行データの提示に加えて、気象・災害情報も同一地図上に表示することのできるJEMAPSはJR東日本の運行管理の形も大きく変えようとしています。

「例えば、大雨などの状況が発生して安全な運行が難しくなる可能性が生じた場合、社内の運行データに加えて、気象・災害情報などの社外データに基づいて状況を把握し、そのデータを可視化、分析、資料化した上で、現場からの生の情報や自治体から提供される情報を加味して最終的な意思決定を迅速に行うことができるので、初動のスピードが格段にアップします。これも膨大で多様なデータを同一の地図上で表現できるMapboxの拡張性の高さが大きく寄与していると考えています」下田 氏

導入の効果

JEMAPSは、ヒトが生活するうえでの「豊かさ」を起点とし、リアルなネットワークと外部の技術・知見を組み合わせた新たなサービスを創造して新たな価値を社会に提供することを基本方針とするJR東日本のグループ経営ビジョン「変革2027」に向けた取り組みとして広く注目を集め、2023年度グッドデザイン賞やITMC2023 – IT賞(公益社団法人企業情報化協会)などを受賞しました。さらに、2023年の鉄道博物館での夏季展示と2023年10月に開催されたCEATEC 2023での一般公開では多くの来場者の関心が集まりました。

「CEATECでは1,000名近くの来場者の方々にJEMAPSについて説明する機会をいただきました。また、鉄道博物館では1日あたり200名以上のお客様にご覧いただきましたが、鉄道会社がこんなことをやっているんだと驚かれる方も少なくありませんでした。このような一般公開を通して、モビリティの将来に向けた私たちの取り組みをご理解いただき、さまざまな業種の方々から意見を頂いて、将来的な協創や協業の可能性を探っていきたいと思います」下田 氏

「7,000営業キロ以上の路線で毎日運行する1万1千本以上の列車という当社のリアルな資産と駅や運行列車から秒単位で収集されるビッグデータという情報資産をMapboxの地図プラットフォーム上で組み合わせることによって生まれる可能性は無限大です。一般公開では、単なる情報提供だけでなく、エンターテイメント性の高いツールとしても認識されたという手応えも得られました。社外への展開はまだ検討を始めたばかりの段階ですが、これからさらに新しい可能性が生まれるのではないかと期待しています」神谷 氏

将来の展望

Mapboxのサービスを活用したJEMAPSは、現在、JR東日本の各部署で利活用が進み、社内の各系統で業務利用されています。しかし、JEMAPSは、まだ進化の過程にあります。今後も社員のニーズに基づいて、現時点では表示されていない設備や施設を新たに登録して表示することや、表示できる運行情報や気象情報を増加・拡大することが検討されています。将来的には社内での活用だけでなく、他の鉄道会社や異業種の企業、自治体などと連携して、利用者の方々への情報提供を始めとして、社会活動に貢献するツールとして活用する可能性が広がっています。

「地図を手軽に利用して、スピード感を持って開発することのできるMapboxは私たちには最適でした。JEMAPSでの利用という観点から欲を言えば、衛星写真の3Dマップのサービスやストリートビューのような機能が充実したら、臨場感の高いリアルなビューを構築することも可能だと思いますし、衛星写真の更新頻度が上がれば災害発生時によりきめ細かい対応が可能になるのではないかと思います。JEMAPSの追加開発は今でも続いていますし、Mapboxの機能の追加に合わせて進化はさらに続くと思います。私たちは、JR東日本として社会のために何ができるかを絶えず問い続けています」下田 氏

Maps feature data from Mapbox and OpenStreetMap and their data partners.

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